■従来の常識を超える開発目標とその手法
トヨタ セルシオの「CELSIOR」という車名は、ラテン語で「CELSUS(セルサス)」「至上、最高」という意味の言葉から作られた造語です。すべてに最高を求めてトヨタがセルシオの開発に投じた金額は750億円。6年の歳月と3700人のスタッフによって作りこまれました。結果、その出来はこれまでの国産車はもちろん、世界的にも類を見ないほど洗練されたものになりました。

特に初代セルシオが海外のメーカーを震撼させたのがその静粛性の高さでした。クラウンで磨き続けた静粛性は100km/hで55dbという値を達成し、当時のライバル車、メルセデスベンツの420SEL(63db)、BMW735i(61db)を圧倒しました。また振動も非常に少なく、エンジンの上にコインを立てても倒れないというマジックのようなことも実現しました。

これは「源流対策」と呼ばれる設計の概念を取り入れて達成されたものです。例えば振動や騒音レベルを下げるとき、防音材や制振材の量に頼るのではなく、エンジンやシャーシといった発生源から見直す。研磨や工作精度を引き上げ、音源そのものを無くすことを考えました。対症療法ではなく、問題を根元から解決するという手法を選んだのです。


■世界の名車に影響を与えた初めての日本車
このようにトヨタ開発陣の情熱を惜しみなく注いだセルシオは、当時の名だたるライバルを圧倒する性能と品質を誇りました。セルシオの完成度は世界中のメーカーに衝撃を与え「セルシオショック」と呼ばれる現象を引き起こしたほどです。後のキャデラックはセルシオ・コンプレックスともとれるスタイリングとなり、ジャガーはセルシオのエンジンを参考にしたと公言し、メルセデスベンツも低速の乗り心地と快適性を重視する方針に変わりました。


■欧州各車の特徴は?
まずメルセデスベンツの特徴について。最近でこそコストダウンの影が見られますが、初代セルシオが登場した当時は、「最善か無か」というストイックなまでの企業ポリシーを掲げ、世界一安全で、耐久性にも優れたクルマを作り続けていました。特に速度無制限のアウトバーンで鍛えられた高速安定性は見事で、国産車を寄せ付けないものがありました。

一方のBMWはスポーツセダンの代表です。メルセデスよりも少しスポーティーで若々しいイメージが持ち味です。伝統を重んじ重々しいメルセデスベンツに対し、都会的なセンスで対抗してきました。

高級車としては新参のアウディはBMWよりも更に先進的なイメージです。フルタイム4WDのクアトロを中心に、雨や雪道など悪条件でのアドバンテージからビジネスマンズエクスプレスの需要を喚起し、そのクリーンで知的なイメージも手伝って、医者や弁護士などアクティブに働くエグゼクティブのクルマという評価を得ました。

他にも世界にはロールスロイス、ベントレーを筆頭に、ジャガーやキャデラックなど、名だたる高級車が存在します。トヨタ セルシオ(輸出名レクサス)はその歴史と伝統に日本人の得意とする技術と作りこみで勝負を挑みました。

それまで高速性能を第一に開発してきたドイツ勢、そして各国の高級車に「究極の静粛性と洗練性」というまったく新たな価値基準を提唱したトヨタ セルシオは、新世代の高級車として日本車として初めて、高級車の世界でその存在感を示したのです。



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